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White Bird [Part.1]


By Virginia Aldridge
Directed by Winrich Kolbe
Stephanie Mason
Gilbert Cole
Anthony Solan
Carson James
Donner
..... Catherina Hickland
..... Don Galloway
..... Bert Freed
..... Richard Caine
..... Charles Picerni

[PART 1]

        (暗転)
    1.事務所内----秘書室----昼
        (きちんと有能に整った部屋。秘書はいない。電話が鳴り、若く奇麗な娘が横手の図書室から入って
        来る。しおりがいくつもはさまった本を何冊か抱えている。彫刻されたオーク材製ドアの向こうにい
        る弁護士の秘書ステファニー・メーソンである。黒いスラックスにウールのブレザーと言うきちんと
        したいでたち。本を抱え直して受話器を取る)

        ステファニー:(電話に)……はい、月曜の10時半に……結構です。それではまた。

        (受話器を置き、本を持ったままオーク製ドアの所へ。軽く叩き中へ入る)

    2.事務室内----昼
        (上品で上等な調度。壁には本物の絵。明らかに繁盛している。持主のエドワード・コールも部屋同
        様金がかかっている身なり---あつらえたスリー・ピースの背広。見事なこめかみに白髪がひとはけ。
        だが、態度は柔らかく丁寧。ステファニーが入って来ると、書類から目を上げにっこり笑う)

        ステファニー:そろそろ時間なんですけど……何か御用は?
        コール   :そうだな…そうそう、下に忘れ物を取りに来る依頼人がいるんだが。(書類鞄を示し
                     て)もうすぐ着くはずなんだ。銀色のセダンで運転手付き。すごい車だ。
        ステファニー:すぐわかりそうですわね。知っている人かしら?
        コール   :(冗談めかして)いや、税金対策に悩める独身富豪さ。
        ステファニー:おっしゃる通り、そんな人知りませんわ。(笑う)では失礼します。
        コール   :おやすみ。
        ステファニー:おやすみなさい。

        (テーブルから書類鞄を取り上げる。「さようなら」とかアドリブで別れ彼女は出て行く。コールは
        考え込んだ顔つき)

    3.事務所内----受付デスク----昼
        (ステファニーはコートを着、ハンドバッグと書類鞄を取り上げ、部屋を出る)

    4.街頭----昼
        (鞄を持ったステファニーが高層ビルから出て来る。通りには仕事帰りやウィンドウショッピングの
        人々。中にバス停近くで新聞を読んでいる男と、ショーウィンドウを覗き込んでいる男がいる。ステ
        ファニーはリムジンが来ないかと見回す)

    5.道路
        (白いリムジンがゆっくり近づいて来る)

    6.車内----昼
        (どっしりとした身なりのいい男。アンソニー・ソーランが後部座席に座っている。ステファニーを見
        つけ、運転手にそばへ車を寄せるよう指示する。ステファニーがこちらを見て歩き出す)

    7.道路
        (車が近づくとバス停とウィンドウ前の2人の男が同時にパッとステファニーに向かって動き出す)

    8.車内
        (ソーラン、2人に気づく)

        ソーラン    :罠だ!

    9.道路
        (リムジンはタイヤをきしらせて走り去る。男の1人----カーソン・ジェームズ----がステファニー
        をつかみ、書類鞄を引ったくる。びっくりするステファニー。もう1人は携帯無線機に話している)

        ステファニー:何するの?! 離してよ……
        ジェームズ  :いや、お嬢さん。ここにいてもらいますよ。
        ステファニー:(間)やめてったら!
        ジェームズ  :司法局の者です。こちらへ。

        (彼はステファニーを覆面車へつれて行く。彼女の表情がクローズ・アップ)

  10.ハイウェイ----夜

        (トランザムが楽々と走っている)

  11.車内----夜----マイケルは:
        (リラックスして、車外の景色を楽しんでいる。ポピュラー音楽がかかっている。マイケルは別のテ
        ープを入れる。バラード--ラブ・ソング。テープに合わせてそこここにアドリブを入れながら歌い出
        すマイケル。)

        KITT    :マイケル?
        マイケル    :何だい、キット?
        KITT    :「C」の音は出ていませんし「D」の音は聞こえませんね。
        マイケル    :(ニヤリとして)そうそう、お前さんは完全無欠の耳を持っているんだったな。

        (前方にコンビニエンス・ストアを見つけ、進路を変える)

        KITT    :時には持たなければよかったと思います。
        マイケル    :そうだろうな。
        KITT    :御同情ありがとう。
        マイケル    :いやいや。

        (店の前に乗り付け、止まる)

        マイケル    :(降りながら)1杯どうだい?
        KITT    :おもしろい冗談です。

  12.コンビニエンス・ストアの外----夜
        (ドアへ向かいながら、入り口の横においてあるラックの夕刊をチラリと見るマイケル。足を止める-
        --目はステファニーの写真に釘付けだ。見出し曰く『FBI、ギャング界への手がかりを得る』。
        じっと見つめるマイケル。硬直状態。やがてあたふたと小銭を取り出し、25セントをスロットに入
        れ新聞を1部とる)

        マイケル    :スティービー!?

  13.----カット----

  14.警察署・尋問室内----夜
        (ステファニーがテーブルに座っている。ぐったりとして、ムッツリした表情。おびえも混じってい
        る。つい今しがたまで喋りながら行きつ戻りつしていたジェームズ、今は黙っている。ピンと張り詰
        めた沈黙)

        ジェームズ  :鞄の中の金は印付きだったんだ。非合法なもので、出所はアンソニー・ソーランと言
                      う男だ。君は知らんかもしれんが、こいつは司法局やFBIじゃ有名人なのさ。名前
                      ほどゃないのが、こいつとギルバート・コールとのつなだりだ。
        ステファニー:嘘よ。
        ジェームズ  :「嘘よ」か。6ヶ月間君のボスを追っていて、ソーランとつるんでいることも分かっ
                      ている。今までは証明できなかったが、今日のこの金が証拠だ。
        ステファニー:それなら逮捕したらどう?
        ジェームズ  :やつらはズル賢い。そんな人間を野放しにする気はないだろう?(間)いいか! ぶ
                     っちゃけて言うが、一切は君の証言にかかっているんだ。特別な指示をうけてやつか
                     らあの鞄を託されたって言う証言にな。
        ステファニー:もし、私が証言を拒否したら?
        ジェームズ  :なら鞄がコールの物だという証拠は不十分だ。したがって君がすべてをひっかぶるこ
                     とになる。

        (ステファニーの表情でフェイド・アウト)

  15.----カット----
  16.----カット----
  17.----カット----

  18.郡拘置所内、受付前----昼
        (マイケルは行きつ戻りつ、ドアが開いて人が出て来るたびにビクッと飛び上がる。やっと出て来る
        ステファニー。2,3歩前へ進みかけて、立ち止まるマイケル。じっとステファニーを見つめる。彼
        女は尋問でグッタリ疲れた様子。身の回りの品が入った小さい袋をかかえている。ギルバート・コー
        ルがいないかと見回しているところへマイケルは近寄っていく)

        マイケル    :ステファニー。(やさしく)

        (振り向くステファニー。マイケル、じっと見つめる。目が合った瞬間ステファニーの表情を困惑の
        影がよぎる)

        ステファニー:何か用?
        マイケル    :俺はマイケル・ナイト。君の保釈を手配した。
        ステファニー:(じっと見つめて)どこかで会ったかしら?
        マイケル    :いや。
        ステファニー:コールさんの使いなの?
        マイケル    :違うよ。ナイト財団に雇われている。
        ステファニー:悪いけど、知らないわ。(はっとして)……何故聞いたこともない財団が保釈金を
                     出してくれたのかしら?
        マイケル    :それは……事件に興味を持っているんで、手を貸したいんだ。
        ステファニー:答えになってないわ。
        マイケル    :歩きながら説明するよ。
        ステファニー:(警戒して)どこへ行くの?
        マイケル    :君のアパートさ。これ以上ここにいたくないだろう。
        ステファニー:(微笑む)もちろんよ。
        マイケル    :そうだと思ったよ。

        (会って初めて彼女の笑うのを見て、マイケルはどっと思い出に流されそうになるが、何とか持ちこ
        たえる。2人は一緒に歩き出す)

  19.車内----昼
        (マイケルが運転している。ステファニーは考え込んでいる様子。突然何事かに思いあたってマイケ
        ルを見る)

        ステファニー:アパート住まいだってどうして分かったの?
        マイケル    :書類に書いてあったよ。

        (納得したようなステファニー。が、再び目を向けて----)

        ステファニー:よく手に入ったわね。
        マイケル    :財団にはコネがあるんだよ、ステファニー。
        ステファニー:強い味方がいないのは私だけみたいね…ごめんなさい。私って何てかわいそうって、
                     ちょっぴり思ったの。
        マイケル    :無理ないさ。ステファニー。君にだって味方はいるよ……気が付いていないだけだ。
        ステファニー:本当にありがとう。でも私のボスが助けてくれるわ。きっと今ごろ保釈を用意中よ。
        マイケル    :……君の忠誠心は素晴らしいよ。その信頼はね。……でもステファニー、今のとこ
                     ろで君のボスはどっちつかずの傍観者とはとても言えないな。
        ステファニー:(腹をたてて)誰もかれもコールさんを悪く……。よくわからないけど、なにか悪
                     事をした人みたいに言うのね。ふん。そんなこと信じるもんですか。
        マイケル    :信じろとは言わないよ。ただ、もっと詳しいことが分かるまでは考えをコレと決めて
                     しまわないほうがいい。

        (考えにとまどうステファニー)

  20.アパートの外----昼
        (車が乗り付け、降りる2人。KITTを監視モードにしたマイケルは、ステファニーをアパートへ
        リードしていく。

        マイケル    :(やがて)さて、どうだい?
        ステファニー:わからないわ。
        マイケル    :いいかい。24時間だけ僕を信じてくれ。それでも納得いかなければ好きなようにし
                     たらいい。

        (入り口のドアの前で立ち止まる。マイケルにとってはなじみのドア)

        ステファニー:なぜ、こんな手間を?
        マイケル    :言っただろう?
        ステファニー:財団とやらね。でも、それだけじゃないでしょ?
        マイケル    :(間)そうだ。
        ステファニー:あなたを知っているような気がするの。声や……しぐさが……。

        (取り返しのつかないことになる前に立ち去ろうと思うマイケル)

        マイケル    :ところでさっきの話、どうだい?
        ステファニー:O.K.よ。
        マイケル    :そうこなくっちゃ。2時間で戻ってくるよ。さあ、ドアにかぎをかけて、誰も入れち
                     ゃダメだよ。

        (ステファニーは肯いてニッコリ笑う。アドリブで「さようなら」とを言い交わし、マイケルは立ち
         去る。見えなくなるまで見送ってからドアのかぎをはずすステファニー)

  22.車内----昼
        (本部へ急ぐマイケル。考え事に沈んでいる)

        KITT    :マイケル?
        マイケル    :何だい、KITT?
        KITT    :気分は大丈夫ですか? 勝手ですが身体状態をスキャンしました。血圧が120から190、
                     脈拍は140もあります。
        マイケル    :上等だ。
        KITT    :平均値からはほど遠いですよ。
        マイケル    :もっとひどいかと思ったよ。

  23.----カット----
  24.----カット----

  25.本部内----昼
        (ボニーはKITTのプログラム中。マイケルがやってくる)

        ボニー      :ステファニー・メーソンって誰?

        (マイケルはちょっと考え込んでから、別に話してもかまわない、と判断する)

        マイケル    :彼女は……その、俺が別の顔だった時……マイケル・ロングだった時、ステファニー
                     はフィアンセだったんだ。

        (じっとマイケルの顔を見つめるボニー)

        ボニー      :マイケル、ごめんなさい。知らなかったの……。
        マイケル    :いいんだよ。知っているのはデボンと君だけだ。

        (仕事を終え、立ち上がるボニー、間)

        ボニー      :コールを追いかけられるようプログラムしたわ。役に立つといいけど。
        マイケル    :恩に着るよ、ボニー。

        (KITTに乗り込むマイケル)

        ボニー      :マイケル?

        (動きを止めるマイケル。ボニー、抱きしめる)

        ボニー      :気をつけてね。

  26.ハイウェイ上----昼----ストック分使用
        (斜路を降りたところで180度のUターンをするKITT)

  27.ステファニーのアパートの外----昼
        (KITTが乗り付け、マイケルが急いで降り、アパートへ向かう)

  28.ステファニーのアパートのドア
        (ノックしようとしたマイケル、錠が壊れているのに気づく。押すと内側へ開くドア)

  29.ステファニーのアパート内----昼
        (ゆっくり入るマイケル。暗い。突然、ドアの後ろから何者かが野球のバットで襲い掛かる。反射的
        に身体をかわすが、肩にあたる。倒れながらも手をのばし、相手の足をつかむ。2人は床に転がって
        取っ組み合う。やがてマイケルは手を止める。相手----ステファニー----は自由になろうともがく)

        マイケル    :ステファニー! ステファニー! 俺だ。マイケルだよ!

        (初めて相手の顔を見るステファニー)

        ステファニー:ああ、マイケル!

        (マイケルの胸に飛び込むステファニー。脅えて震えている)

        ステファニー:あいつらが戻ってきたと思ったのよ!
        マイケル    :誰だって? どうしたんだ?
        ステファニー:男が2人来たの。黙っているとドアを破ろうとしたわ。だからまた来たのかと…。
        マイケル    :(抱きしめて)もう大丈夫だよ、スティービー。心配ない。

        (ホッとするステファニー。が、次の瞬間、怪訝な面持ちでマイケルを見る)

        ステファニー:どうしてその呼び名を知ってるの?
        マイケル    :えっ?
        ステファニー:スティービーよ。それを知っている人はもういないはず……

        (うっかり口をすべられたのに気づき、取り繕おうとするマイケル)

        マイケル    :ちょいとやりすぎたかな? ファイルのどっかに載っていたんだ。(立ち上がるのに
                      手を貸しながら)さあ、ここを出よう。安全な所に行くんだ。荷造りしておいで。

        (きびすを返し、寝室へと歩いていくステファニー。立ち止まって、振り替える。何だか変だ……
        どこかなじみがあるような、この感じ……。マイケルは答えない---と言うよりも答えられない。
        寝室へ消えるステファニー。マイケルの表情でF.O.)

  30.アパートの外----昼
        (建物から出て車に乗り込む2人。マイケルはスーツケースを後部座席になげる。車が出て行くとこ
        ろから、カメラをまわして半ブロック離れた所にとまっている別の車にうつる。車内には2人の男。
        エンジンがかかり、尾行を始める。F.O.)

  31.アパートの外----昼
        (KITTは交差点を渡って見えなくなる。セダンは間をたもってつけていく)

  32.セダン内----昼
        (運転手の名はブレイク。助手席の男はドナー。10歳ほど老けている。40代後半か50代初め頃。
        2人ともプロらしい。ドナーは車内電話を使っている)

        ドナー      :(電話に)今しがたアパートを出ました。
    

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