陽が沈んでからすでに何時間かが過ぎ、一般の職員も殆どが帰ってしまったFLAG本部には、3日ぶりにデボン、マイケル、エイプリルの3人が顔を揃えていた。 「……そうか、分かった。それじゃあ後は君に任せたぞ」 デボンは電話を切ると、晴れやかな表情でマイケルとエイプリルを見た。 「サンダース准将は空港で逮捕されたそうだ。逃げた雑魚どももそのうち捕まるだろう。それから国防総省にあるナイト2000に関する情報も、クレメントが責任を持って抹消すると言っている。これでまずは一安心だ」 「そうすると、あと問題はガースだけって訳ね」 エイプリルが腕組みをして言う。 デボンも顔をしかめて、 「ふん。奴の悪運の強さと悪知恵には全く恐れ入るな。まんまと国防総省を手玉に取りおった」 「それから、あんたもな、デボン」 と、マイケルが悪戯っぽく言う、 「いや…、この件に関しては私の不注意だった。君とKITTには申し分けない事をしたと思っとるよ」 すっかり恐縮するデボンの肩に、マイケルは肘を乗せて顔を近づけた。 「本当にそう思うのかい?」 「ああ、本当だとも」 「じゃあ態度で示してもらいたいね」 「態度で?」 マイケルはデボンから離れると、大袈裟な身振りで言い出した。 「今回の事件で俺もKITTも心身共に深い痛手をおった。この痛手を癒す為に、俺はKITTとしばらく旅に出る事にする」 「何だって!?」 デボンが驚いて椅子から立上がった。 だがマイケルはそんな事は気にもとめない様子で続ける。 「そうさ。心の傷は深いんだぜ。とりわけKITTはな。だから俺達は明日から1週間の休暇を要求する! いいだろう? デボン」 マイケルがデボンに微笑みかける。デボンが呆れて言葉も出ないでいると、 「よーし! 交渉成立だ! それじゃあ俺は明日の支度もあるし、今夜はこれで失礼させてもらうよ」 マイケルはデボンとエイプリルに手を振ると、足取りも軽くデボンの執務室を出ようとする。 「待て! マイケル。それとこれとは……」 デボンは呼び止めかけたが途中で止め、「してやられた」とでも言うように首を振った。 しかしやがてデボンは満足そうな笑みをうかべた。 エイプリルも僅かに首をすくめただけで、デボンの方を見て微笑んでいる。 やがてデボンはいつものように、事件の最後の後始末をするべく、デスクの上のファイルを取り上げた……。 |